グループLINEに時間差で雪の写真があがる。東京の同業者たちの帰り道だ。みんな似たような時間まで仕事をしている。関西は雨だったという。同じ東京でもいろんな道があるものだ。向かい風に傘を傾け、前傾姿勢で駅へ向かう人、タクシーから降りようとする人が先に外に出した傘先、ポケットに手を入れ足元を確かめるように見る人、そしてそれを見るその人の隣の人、誰もいない住宅街、電燈が雪と同じ色をしている。青い電車が通り過ぎるホーム。平面をいろんな色の平行線が横切る素敵なデザイン画になっていた。私は足跡はあるが人気のないまっすぐな道を歩きながら写真を撮った。その写真に友人がthe vanishing pointという言葉を使ってコメントをくれた。消失点のことだ。街道と高速道路がまっすぐに走るこの道は平行線がいくつも並びそのずっと先でそれらは交わってみえる。交わることなんかないのに。北海道の人はこんな雪に傘なんかささないと聞いた。私も隙間時間に傘をもたず非常口に出てみた。あっという間に服に白い点々ができた。東京の雪はべちゃっとしている気がする。部屋の中からはもっと粉雪みたいに見えたのに。家の最寄駅もはじめてきた街みたいになっていた。まだ残るクリスマスのイルミネーションが再び存在感を増していたが、ポツンとした様子に見えた。皆が傘を開きその横を無言で通り過ぎる。立ち止まって写真を撮ろうとすると前にいた人が先に立ち止まった。その人の邪魔にならない場所からシャッターを切る。携帯で撮るとシャッターを切るという感じは薄い。傘が邪魔だが手ブレしないようにちょっと耐える。ピコン♪いい写真が撮れた。いつもの散歩道も歩いてみた。とてもとても素敵な景色で小さく声があがった、私の中で。小人さんたちが喜んでいたみたい。雪が嬉しくて小さなふわふわの手袋とふわふわの帽子でいくつも雪だるまを作っていたあの子は中学生になった。「まだ雪嬉しいのかな」というと「嬉しいみたいよ」と雪だるまマークと共に母親から返事が来た。「みたい」がその子が大きくなった証。わからない部分、わかろうとしなくても大丈夫な部分、そもそも触れえない部分、そういう場所を大切にされてきた子も自分で必死に守ってきた子もどうか良い一日を。
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