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精神分析

土地、街、生活

まだまだ残暑か。夜はだいぶ涼しくなったが朝がまだ爽やかじゃない。

群馬県渋川市の明治32年創業の老舗、錦光堂の渋川銘菓こがねいものことは書いただろうか。山梨県の信玄餅でお馴染みの桔梗屋のことは?毎日お菓子は豊かでその土地の老舗の味は懐かしく。

桔梗屋って工場見学ができるのか!行きたい。コロナでそういう活動をやめてしまった会社のことも聞くがとりあえずよかった。実際に製造の工程をみる体験は本当に貴重。金沢の福光屋さんをまだ知らなかった頃、ここはなんだろう、と友達と覗き込んでいたら蔵内へ誘ってくれた社員さんには今もとても感謝している。白衣に着替えて帽子をかぶって見学&段階ごとのお酒を試飲。まだお酒の味もよくわかっていなかった頃だ。有名な酒蔵だと知ったのは随分経ってから。加賀鳶はその後もっともよくのむ日本酒のひとつになった。今は予約制の見学コースもあるらしい。旅に出ればその製造工程と出会える場所へ出向く。このお味はどこから?というのを知ると好み以前の味わいを楽しめる。歴史を味わうのだ。

この夏は能登の被災地の手前まで出向いたがそこでも倒壊した家屋をみた。報道されないことが問題になっていた地域だが震災に対してはいいかげんこちら側の想像力が必要だし可能だろう。震災から半年以上経ってもこの状態か、と悲しく、自転車で走りながらところどころで感じる道路のでこぼこも地震の影響だろうか、と沈んだ気持ちになった。博物館によったら文化財レスキューの張り紙がしてあり、被災した家屋などから集められた陶器や古くて大きなボンボン時計とかが並べられていた。文化財レスキューはいくつかの場所で行われているが相談場所としても知られてほしいし数も増えてほしい。少し前の記事だが載せておく。

能登半島地震・文化財レスキューの記録】(特集展示)

輪島の文化も今後どうなっていくだろう。輪島朝市はようやくがれきが取り除かれてきたときく。公費解体の手続き自体が困難という方もおられるだろうか。気持ち的に困難という場合もあるかもしれない。みればわかるだろう、という被害に対して罹災証明書を準備しなくてはならないとか気持ち的に大変そうだ。チェックリストを見ると「すべての権利関係者(共有者、相続権者、抵当権者など)の同意を得ており」という確認事項もある。土地のことだから当然必要なことだが、突然人が亡くなったときなどにも感じる思考停止のままただ急かされる状況はその土地の未来にどう影響してくるだろうか。その土地で生活をすること自体が文化を生んできた。その土地に根付いてくれる人がいたから私たちもその恵みを目や耳や舌などで味わうことをさせてもらえる。私もできることを常に考えなおしていかないといけないと思った。

早朝に作り置きをする習慣がついたがやはり作る人と関係の近い新鮮な食材だったらそれだけでおいしいのに、とスーパーの棚の前を寂しい気持ちで歩き回ったりすることがある。以前はうちの街にも先生になってくれるお魚屋さんも八百屋さんもあった。親子でやっていた店はお母さんがちょっと怖かったが聞けば色々教えてくれた。息子さんだけのときはいつもおまけしてくれた。土用の丑の日の活気は通り過ぎるだけで嬉しい気持ちにさせてくれた。その店が閉じてからずいぶん経つ。息子さんといっても私より年上と知っているが、その後も彼をみかけることはあった。先日もみかけた。なんと赤ちゃんをだっこしている。私の前を歩いていた人は「あら!」と嬉しそうな顔をしてたまたま持っていたなにかをあげていた。「本当にいいんですか?」「いいのよ!うらやましい!」など地元の付き合いが長いらしい。うらやましい、という言葉にいくつかの可能性を思ったが子供が愛される街であってほしいなとは思った。