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精神分析

本『世界は時間でできている』、映画『黒川の女たち』

小さな窓を開けても風を感じなかったのに南側の大きな窓を開けたら風が吹き込んできた。カーテンを変えたら風の通りがあまり良くなくなってしまったのが残念だが、こんな湿気を含んだ風はあまり通したくないから窓を閉めた。今日も変なお天気なのだろうか。昨日は台風と言われていた月曜日より変なお天気だった。まだ降っていない、と歩き出すと微かいに水滴を感じ、それが止むと少し陽射しも感じ、と思ったら突如土砂降り、など。みんな濡れたり乾いたり。雨はちょうどよく降ってほしい。貴重な田んぼが傷つかないように。ところで「土砂降り」ってどうして「土砂」っていうの。やっぱり「ドシャ」っていう音を土砂崩れとかのイメージと重ね合わせて漢字を当てたのかな、と思って検索したらやはりすでに尋ねている人がいた。そしてすでに回答もあった。さすがレファ協。

夜には地震もあった。福島、茨城は地震が多い。大きな地震が来ないといい。トカラ列島近海を震源とする地震も続いているらしい。島から避難されたみなさんはどうしておられるのだろう。

先日、平井靖史『世界は時間でできているーベルクソン時間哲学入門』を読んでいると書いた。今回、チェックしたかった箇所は第2章の「どうすれば時間は流れるのかー現在という窓」の中の特に「相互浸透と共時性」の箇所。特に、と書いたところで結局その前をしっかり読んでおかないとついていきにくいので大変だが自分がどういう価値観に基づいて臨床をやっているかを振り返るためにも苦労はしておきたい。とはいえ、この本は短期記憶も弱い私には大変ありがたいことに「このことはこの章のここに書いてあったよね」という感じですぐに復習できる書き方なので迷子になったら覚えている景色まで戻る、そしてまた出発、を繰り返せばいい。さて、なぜ今ここを読んでいるかといえば「今ここ」を再検討するためだった。感覚クオリアが織り込まれる流れはどうやって作られるのか、それを作り出している素材とは、という問いから議論は展開する。難しいけど本当に丁寧な本なのでベルクソンに少しでも興味がある人にはぜひおすすめしたい。

日本ペンクラブが緊急声明を出した。一部抜粋するが全文読んでほしい。

「事実とは異なる、根拠のないデマが叫ばれています。これらは言葉の暴力であり、差別を煽る行為です。こうしたデマと差別扇動が、実際に関東大震災時の朝鮮人虐殺等に繋がった歴史を私たちは決して忘れることはできません。」

本当にそうだ。

先日、黒川開拓団として満州に渡った女性たちが「みんなのために」強要されたソ連軍への性接待に関するドキュメンタリー映画『黒川の女たち』を見た。黒川開拓団については2022年に『ソ連兵へ差し出された娘たち』(平井美帆著、集英社)という本が第19回開高健ノンフィクション賞を受賞しているが、この本に対しては遺族会の方が問題点を指摘する声明文を出されている。

戦後70年が過ぎようとする2013年、佐藤ハルエさん(2024年1月に99歳で死去)と安江善子さん(2016年に91歳で死去)という女性が、性暴力にあったことを公の場で明かした。その後も語り部としての活動を続ける彼女たちを知った松原文枝監督がご本人とその周りの方々と密な関係を作りながら撮り、2019年にテレビ朝日で放送されたテレメンタリー「史実を刻む~語り継ぐ“戦争と性暴力”~」の劇場版が今回の映画らしい。

過酷すぎる体験を語ることに対してなにかいえるのは当事者だけだろうと思う。語ることまで強要されたら人には何も残らないような気がする。だからこそ彼女たちが語ることでなかったことにしないと決め、それを行動に移したことに聞き手としては最大限誠実でありたい。どうあることが誠実かはわからないとしてもとにかく耳を傾けることを積み重ねていく必要がある。簡単にデマを叫ぶ声に対してはそれはデマであるので受け入れないという姿勢を維持しつつ、言葉にできない体験をなんとか語ろうする声に対しては世代を超えて待ち続け、耳を傾け続ける必要がある。映画は私がみた回は若い人はほとんどいなかったように思う。年配の男性が少なくなかったことになんとなく安堵した。この映画でも印象に残ったのは遺族会会長の藤井宏之さん。彼自身は戦後生まれだが父親が開拓団のひとりだった。彼女たちのもとに実際に訪れ耳を傾け続けなんの説明もなく立てられた「乙女の碑」の横に事実を記した碑文を立てるために尽力される様子に胸打たれた。それぞれがそれぞれの立場で複雑な思いを抱えているのが実際だろうけど何を最優先すべきかということだけは慎重に考え取り組む必要がある。相手を判断するのではなく、自分と向き合うことの重要性もここにある。

さて、今日は水曜日。良い一日になりますように。

作成者: aminooffice

臨床心理士/精神分析家候補生