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精神分析

アンドレ・グリーン“The Fabric of Affect in thePsychoanalytic Discourse”を使ったり。

ほとんど眠れず起きてしまった。今年最後のReading Freudを終え、明日も来るからいいか、とオフィスをそのままにして帰って、遅いごはんを食べて、お風呂に入ってすぐに寝るつもりがまたアンドレ・グリーンの翻訳をはじめてしまった。すると台湾の地震のニュース。年末年始を台湾や沖縄で過ごす友達の心配をしながらベッドに入ったせいかこの短時間で何回か起きた。昨晩は期待通り、月がきれいだったのに。大きな地震がきませんように。年末年始、みんながよく休めますように、と書きながら帰り道、ベンチで眠っていた人のことを思い浮かべた。

今週は原稿を書くのとReading Freud用翻訳で楽しくも大変で、さぼりつつも忙しくて大分疲れた。翻訳に時間をかけすぎている、出版するわけでもないのに。でもやりはじめると止まらなくて隙間時間を全部使ってしまう。精神分析の文献でなかったら機械翻訳を使ってもよくわからない可能性が高いので集中できないと思うけど精神分析のはある程度わかってしまうだけに細かいところまでこだわってしまうところがあっていけない。時間があるときにこだわるべき。アンドレ・グリーンとオグデンはずっと読んでしまう。今年は本当によく読んだ。そのおかげで演題用とか色々と締切を書けた気もするからよかったのだけど寝不足はよくない。原稿も恐る恐る見直したらなんでこんな文章の繰り返しが、みたいなのもあってやっぱり寝不足の作業はよくないとなった。あーあ。機械翻訳の力も借りずさくさくと読めたらいいのになあ。大学の学部のとき、神宮輝夫先生の絵本の翻訳の講義があったのだけどものすごく難しかった。今でも無理だなあ。あの仕事も本当にすごい。

Reading Freudで「心理学草案」(1895)を精読したのでその意義を確かめるべくアンドレ・グリーンの論文を準備したのだが、当初使おうと思っていたより論文よりNEW LIBRARY OF PSYCHOANALYSISの一冊である“The Fabric of Affect in the
Psychoanalytic Discourse
”(Routledge, 1999年、Alan Sheridan訳)のほうがそのままフロイトの初期の著作について書いてあるからいいな、と思い訳し始めた。原著は“Le Discours vivant”(Presses Universitaires de France, 1973)。いい題。

Meissner, W. W. (2001)による紹介通り「アンドレ・グリーンは、大西洋のこちら側とあちら側のあいだを首尾よく「翻訳」することのできる、数少ないフランスの精神分析家であり思想家の一人である」。本書で「グリーンは議論の中心を、情動概念に対するフロイトの貢献に据え、その検討はフロイトの主要著作のほとんどを網羅することになる。グリーンは、『ヒステリー研究』(1893–1895)や『心理学草案(プロジェクト)』(1895)における初期の定式化から、フロイト晩年の著作に至るまで、フロイトの思想がどのように漸進的に展開していったのかを丹念に跡づけている」。本体より追記が多い本(実際には三分の一らしいけど)という印象で構成は変だが、最初のChapter 1 Affect in Freud’s Work Evolution of the Conception of Affectはとてもいい。フロイトの著作において織り込まれている情動概念に関する思考の展開を以下の段階に区分。

『ヒステリー研究』(1893–1895)から『夢解釈』(1900)まで
『夢解釈』から「メタサイコロジー論」(1915)まで
「メタサイコロジー論」から「フェティシズム」(1927)まで

その期間の主要著作を情動の面から読解。その記述がとてもいい。昨日は最初の「ヒステリー研究」に関する部分を読んで色々と話し合った。精神分析の道具は言葉でしかないがその言葉とはいかなるものかをフロイト、グリーンとともに考えられた。北山修の日本語臨床の観点の重要性も改めて認識。フロイトの現場も臨床現場と日常生活だった。そこにちりばめられた言葉の不思議を高度に学問的に検討していくマニアックな作業は精神分析家には必要だし、私は楽しい。こういう会では難しいしわからないけどなんか楽しいよね、とのが共有できたらいいと思うしそうなっている感じなのでよかった。アンドレ・グリーンなんて難しすぎてこの先読むことなどないだろうと思っていても読んだら意外と「!」となるということもわかってよかった。わかりやすいものを提示してわかったふりを共有しないことを大切にしたい。精神分析は、というより人の心の世界は超複雑で、しかもそれをおおむね言葉でこなしているわけで、そりゃわからないこともたくさんだろうよ、と。無理にわかったふりするからかえって難しいことが起きているのでは、と思うこともしばしばだもの。わかるわからない、いい悪いより、心が動いて、思考が広がるってなんか豊かだわ、という感覚を味わいたい。

ということで今日のグループで仕事納め。がんばりましょう。穏やかな年末年始を迎えられますように。

作成者: aminooffice

臨床心理士/精神分析家候補生