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精神分析、本

神経精神分析関連の論文や本

明るくなってきた。水色とグレーの間の色はなんていうのだろう。色を表す日本語はとてもたくさんあるからきっとぴったりの言葉があるのだろう。

先日、国際精神分析学会のジャーナルThe International Journal of Psychoanalysis: Vol 105, No 5 (2024)が届いたのでパラパラしていた。この号はMark Solmsによるフロイト全集スタンダードエディション改訂版the Revised Standard Edition of Sigmund Freudの特集で17本の論考が載っている。編集長はFrancis Grier、ゲスト編集長にMark Solms。

先日、フロイト読書会でドラ症例を読んだが参加者のみなさんは文章を読むということ自体がなかなか難しいらしくこの論文についての議論はできなかった。私みたいに精神分析家になるのでもなければフロイトを精読する必要はないと思うが精神分析的にものを考えることとフロイトを読むことが連動していない場合の精神分析的臨床とはなにか、ということをまた考えることになった。人の心は本以上に複雑なものだと思うが。ドラ症例はこのジャーナルの特集でもIfrah Biranという人が取り上げている。RSEの訳者であり神経精神分析という新しい学際領域を立ち上げたマーク・ソームズと関心を共有している様子でパンクセップの感情システムのPLAYを使ってドラ症例を検討するという試みは興味深い。Fragment of an analysis of a case of hysteria – Dora’s case and Freud’s storyという題名が示すのは、ドラ症例を教養小説と読んでみれば、それはフロイト自身の成長物語として読めるのではないかということである。すごく簡単にいえばフロイトはドラを使って自分の物語を書いている、ということである、というかきちんと読んでいないが、ざっと見る限りそんな感じがする。「ニュースピーク」をレンズとして用いているところも興味深く、引用されているDana AmirのPsychoanalysis on the Verge of Language:Clinical Cases on the Edgeは読みたいと思った。

私は神経精神分析に関してはこういう論文や入門書に触れる以外の余裕はないが、いろんな方向から精神分析が別の領域へ広がっていくのはいいことだと思う。

入門書としては

神経精神分析入門 -深層神経心理学への招待-』(カレン・カプラン=ソームズ&マーク・ソームズ著、岸本寛史訳、青土社、2022年)

『ニューロサイコアナリシスへの招待』(岸本寛史編著、誠信書房、2015年)

だろうか。

ソームズ自身がこの分野にどうやって関心を持ちどこを目指しているのかは『意識はどこから生まれてくるのか』(マーク・ソームズ 著、岸本寛史、佐渡忠洋 訳、青土社、2021年)が参考になる。この本はパンクセップに捧げられており、先に挙げた論文を読む上でも参考になる。『神経精神分析入門』は初期のフロイトを理解する場合に特にいいと思うが、ルリヤが中心的に取り上げられているところが気に入っている。大学時代、とても好きだった心理学者がルリヤとヴィゴツキーだった。ロシアの精神分析の発展は彼ら抜きには語れない、と思う。

自分がわかること、知っていることなんて世界のほんの僅かであるということに普通に耐えながら学び、議論できたら楽しい。今日もがんばろう。