黎智英氏も周庭氏も逮捕された。周庭氏と一緒に活動してきた黄之鋒氏(Joshua Wong)、若い政治家の羅冠聡氏(Nathan Law)は流暢な英語で海外に向けて声を出し続けている。
20代、自由を求めて国を相手に戦うなんて考えたこともなかった。自分の意見を言えなくなることは自分の母国語を使えなくなることと同じ、それはつまり自分の出自を存在を否定されるようなものなのだろうか。頭ではいろんなことを考える。考えれば考えるほど身体も重い。
言いたいことが言えないこと、程度の差はあれ、おそらく誰もが子供の頃から経験したことのある事態について考えるだけでも原因に向かって紐解けるものではないので相当難しい。それは症状にもなりうるので臨床的にも身近だし、精神分析のように主な道具が言葉である場合、それは単に症状ではなく、治療関係そのものに大きく関係しているので何が起きているのかと常に再考を迫られる。
私たちが当然もつ権利を行使させなくする行為には敏感に抗っていく必要がある。コロナがわかりやすく明らかにしたゼロリスク志向、「正しさ」による支配とも根は繋がっているのだろう。物事は一気に動く。集団であることが自制しないことを正当化する。一方、そうしようとする力に抗う物語は昔から数え切れないほどある。歴史から学ぶことはいくらでもできるはずだと言い聞かせる。
目的としてではなく結果として抗えるように、繊細でしなやかな網目を張りつづけるようにこころを動かし、言葉にできたらいいなと思う。それには言葉を大切に扱ってくれる人の存在がなにより必要だろう。
彼らが発しつづける声を大切にすること。自分の声を大切にすること。いつも立ち返るのは当たり前のようなことだけど、その当たり前こそ守りたい。
蝉が鳴いている。彼らはいつも自然体。