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俳句 精神分析

俳句、恥、駱駝

起きたらまだ夜があけてなかった。夜明けが遅くなってきたのかなと時計を見たらまだ明けるような時間ではなかった。あまりにすっきり起きてしまったけどこれでは寝たことにならないとまた寝た。眠れないからiphoneで角川の俳句歳時記を開いた。「秋」→「時候」と進んで最初に出てくる季語は「秋」。「時候」に分類されている季語は46語。秋で一番多いのは「植物」。189個。春も夏も「植物」が最多。冬は一気に乏しくなって「生活」に分類される季語がグッと増える。冬と新年は分けられているけど重なって掲載されているものも多い。さて、季語「秋」を開いて最初の例句は

此秋は何で年よる雲に鳥 芭蕉

これはこの前も引用したかな。

芭蕉が死ぬ少し前に作った句。古今和歌集の

何をして身のいたづらに老いぬらむ年の思はむことぞやさしき

が意識されている様子だけどこの「やさしき」が「恥ずかしい」という意味だと知ったときは驚いた。この「やさし」は「痩す」が形容詞化したもの。芭蕉と古今和歌集の詠み人知らずさんは同じような情緒を体験していたらしい。

精神分析でも「恥」は大事な情動だ。岡野憲一郎先生がIPAジャーナルに載せたのも「恥」についての論文だった気がする。本にも色々書いていらしたと思うのであとで見直そう。最近はラカンが「恥」について多くを述べていることを知った。記述が回りくどいので何を言いたかったかよくわからないが恥が社会的な情動であるという点は芭蕉も詠み人知らずさんもラカンも共通した認識なのだろう。

まだ暗い時間に歳時記で「秋」の俳句を読みながら一番素敵に思ったのは

金秋や人待つ駱駝膝を折る 岩淵喜代子

鳥取砂丘で見た景色を思い出した。私は動物が膝を折る仕草がとても好き。時間がゆっくり止まるような感じがとても好き。動物には「恥」はないね、きっと。生き恥を晒す、とか絶対言わないと思う。ある種の圧を感じさせる言葉だね、「恥」は。駱駝が膝を折る仕草を今日は何度も思い出しそう。とりあえずNHK俳句を見ましょう。今日の選者は誰かな。その前に洗濯物を干そう。

作成者: aminooffice

臨床心理士/精神分析家候補生