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読書

寒くなった

急に寒くなりましたね。困ります。こうなるのではないか、と思っていたけどやっぱり嫌です。近所の散歩道の金木犀は小さな金平糖のようなお花をすっかり散らして地面を染めていたオレンジもすっかり消えてもうすっかり他の木々に紛れなんの香りも放ちません。あと少ししたらそこが金木犀だったことも忘れてしまうのでしょう。来年も「金木犀は?まだ?今年遅くない?」というのでしょうか。少しずつ少しずつ花咲くのが遅くなりいつのまにか冬の季語とかになっていたりするのかもしれません。でも季語はわりと正確に季節を表していて昨日「ああ、金木犀が終わると冬が来るんだな、きちんと」と思ったのでした。あと1週間で立冬。きっとその頃、ちょうど「ああ、冬だあ」と思う風や空と出会うのです。毎年そうですから。

昨晩、また少し水村美苗の『大使とその妻』を読んでいました。私がさっき書いたような季節の変化がとても細やかに描かれています。小説は現実よりもずっとスピードが速く、季節もどんどん変わっていきますがこのお話は軽井沢の家からの定点観測という感じで主人公が毎日どんな道でどんな景色を見ているのかいつのまにか浮かび上がってくるような繊細な筆致が素晴らしいです。主人公の心の静けさやその静かな心が泡立つような瞬間の捉え方も水村美苗らしくて素敵です。少しずつしか読めてないけどそのスピードで十分な本だと思うので今日も夜、少し読みたいと思います。海外の言葉に塗れながら日本語についてずっとずっと考えてきた著者は主人公そのもの、ではないのでしょうけど思考と言葉の紡ぎ方は多分こんな感じでこのあとの展開と同時にそれを描写する日本語も楽しみです。

外は雨らしく時折大きな雨粒が落ちてきたような大きな音がします。落ちてくる間に重なり合って大粒になったりするのでしょうか。それとも落ちた場所の素材が立てる音でしょうか。しばらくしたら晴れると聞きました。しばらくがどのくらいかを聞くのを忘れてしまったけどどちらにしても傘は必要そう。どこかに忘れてきてしまわないように折り畳みがよいでしょうか。そういえば先日いつもお世話になっている方に「あなたが上着を忘れる季節」と言われました。脱ぎ着が多い季節は管理が難しいけれど季節の出来事として捉えてくださるならありがたいことです。確かに患者さんでも「またこの季節がきてしまいました」と調子の悪さや良さを伝えてくださる方も多く「でも昨年は」と少しずつ馴染んでくるその季節の自分の良き変化を感じたり「やっと寒くなった」と久しぶりの体調の良さを喜んだり。ご自身の身体の調子に耳を傾けることはとても大切。それを大雑把位に「いつものこと」とするよりは「金木犀がすっかり散るといつも」とか言ってみたいものです。今日も温度調節できる服装が良さそう。私は足と首を冷やさないように気をつけたいと思います。どうぞみなさんもお身体お気をつけてお過ごしください。

作成者: aminooffice

臨床心理士/精神分析家候補生