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精神分析

韓国、『何卒よろしくお願いいたします』

朝焼けがきれい。なのだが、韓国が大変なことになっている。どうしてこんなことが起きているのか。こんなに身近な国のことなのに日本のメディアを追っても全然わからない。韓国の人にも何が何だかという間に起きたことなのかもしれないが本当にいったいなんなんだ。わからないときは注視して推移を見守るしかないが変な空想が現場の現実を超えないように気をつけるのは自分自身だ。

韓国のイ・ランと『ぼのぼの』のいがらしみきおがコロナ禍に交わした往復書簡『何卒よろしくお願いいたします』(2022,タバブックス)は二人が自分と相手の情緒を細やかに掴み丁寧に言葉を交わしあう優しい本だ。往復書簡を終えた後の2022年、辛い生い立ちとともに「今すぐ死なないのであれば生きていくしかない」としながらもつながりに希望を馳せるイ・ランへの返信にいがらしみきおが書いていた。


「我々はなぜ、この世界を好きではないまま生きていかなければならないのか。きっと好きではないけど、生きていたいと思わせるものがあるからかもしれない。それはなんなのかと言えば、目をあければなにかが見えるし、聞こうと思わなくてもなにか聞こえるし、なにか口に入れるとうまいとかまずいとか味がし、匂いを嗅いでもいい匂いとかなつかしいとか感じるし、なにかに触るとその感触があって、」

人間のインターフェイスを面白く思えるいがらしみきおの具体的な書き方が優しい。今はとても苦しいけれどきっとどうにかなるよ、とこんなふうに伝えてくれる人が政治家だったらいい。生きる希望を失いそうなときに誰にでもわかる言葉で一緒にいてくれる人がいい。なんでも知ってなんでも管理することなどできるはずがないのに統制しようとする心の動きなどもっとも衰えていい機能だろう。良い方向へ事態が向いますように。一度経験した脅威はその後の自由を確実に奪うだろう。それでも何度でもそれを求められますように。