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精神分析、本

シャルリ・エブド襲撃事件、『跳ね返りとトラウマ そばにいるあなたも無傷ではない』

一昨日雨が降って尖っていた空気が変化した。松過ぎ、小正月、女正月、と新年の歳時記はまだ使える。歳時記は春、夏、秋、冬、新年の分類だ。立春は2月3日。先日梅の木を観察しにいった。もう目覚めている様子だった。蝋梅がそろそろ咲くだろう。あのいい香りにまた会える。会えたらいい。枯れ木には小鳥たちが賑やかで冬も楽しそう。

昨晩、ニュースでシャルリ・エブド襲撃事件から10年とやっていた。当日の現場の様子や犠牲者を追悼する式典の映像が流れていた。

2022年『跳ね返りとトラウマ そばにいるあなたも無傷ではない』カミーユ・エマニュエル 著/吉田良子 訳(柏書房)という本がでた。被害者の近親者である著者が体験した「リコシェ」、これが「跳ね返り」という意味だ。

著者カミーユ・エマニュエルの夫リュズは『シャルリ・エブド』の風刺画家だった。わずか数分の差で襲撃を免れたが現場を目撃しPTSDを発症。その夫の苦しみをそばでともにし、パリにもいることができなくなり、著者はどんどん追い詰められていく。「普通に」考えれば彼女の苦しみは想像に余りあるが「被害者」として「認定」されることは当たり前ではなかった。著者は心理療法家に言われた「跳ね返り」という言葉をキーに自分の体験を綴っていく。いわばたたかいの記録である。柏書房のウェブマガジンに精神科医である阿部又一郎が書いた書評がとてもいいのでそちらもぜひ。阿部又一郎はセルジュ・ティスロンの『レジリエンス : こころの回復とはなにか』の訳者でもあり、臨床家、特に精神分析臨床に関心のある方はそちらもお勧めしたい。

痛みは痛みとして苦しみは苦しみとしてそれが何であるかは専門家は追求すべきかもしれないがそうでなければそれらがそのまま受け止められ「普通に」必要なことがなされる毎日でありますように。

作成者: aminooffice

臨床心理士/精神分析家候補生