カテゴリー
精神分析

坂口ふみ著『<個>の誕生 キリスト教教理をつくった人びと』

すっきり晴れている。が、梅雨。このまま1日とはいかなそう?朝はこういう文字もとてもみにくい。さっきよりはマシだけど。老眼鏡をかけてもピントが合うのにすっかり時間がかかるようになってしまった。遠くの方は相変わらずよく見えるのに。

昨日は途中で放っておいてしまった坂口ふみ著『<個>の誕生 キリスト教教理をつくった人びと』(岩波現代文庫)を持ち歩いていた。序章「カテゴリー」はジェンダーによる差別と役割意識を問題とする人全員に読んでほしい。

坂口ふみさんは、私の指導教官だった柏木恵子先生と同世代で、もしかしたら同じ時期に東大にいたのではないか。柏木先生からお聞きしていた話と重なるのでなおさら胸が痛む。柏木先生のご自宅に伺ったとき、海外にいくと気に入ったカップを1客買ってくるのが習慣、というようなことをおっしゃり、そのコレクションを見せてくださった。食器棚もとても素敵だった。ペアではないのが先生らしいと思った。

先週末の日本精神分析協会の学術大会で私は「カテゴライズ」という言葉を多く使った。自分の書いたものには一回しか出てこないのにパネルの議論の際に何度か使った。概念や理論とはなにかという議論でもあり、とても大事なことが話題になったのがよかったと思った。坂口ふみさんの本はキリスト教のインパクトが身近ではない私たちに哲学を通じてそれを伝えてくれる。

2026年10月に日本学術会議を特殊法人に移行させるための学術会議法人化法が成立した。名だたる学者たちの反対を押し切っての成立という時点で学問の声を聞く耳を持つ気のない政府のもとでわたしたちは生活を営んでいる。現行法の「平和的復興、人類社会の福祉に貢献する」という前文や「独立して職務を行う」という文言は消えたという。坂口ふみさんにこの本を書かせた友人アンナさんの死という出来事。アンナさんのような方をさらに失望させるような出来事が日々起きている。その場で生き残ってしまった、あるいは生き残ろうとしている人たちがギリギリ無力感に苛まれるのを防いでいる理由がこういう戦いだとしたらそれはやはり学問と密接に関連したこころの危機であることに変わりない。本書にある「隣人」の意味での「隣人になる」ことを志していきたいと思う。