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精神分析 読書

辻村深月『この夏の星を見る』、エリクソン

やっぱり秋の空はスッキリきれい。今朝は房州銘菓元祖牛乳せんべい。館山市の加藤菓子舗という老舗のおせんべいだそう。予想より少し硬い。そして予想より少し甘い。でも牛乳せんべいってこういう感じだった、そういえば、と思う。美味しい。

クリーニング屋さんから特別ご優待のハガキが届いていた。今月はクリーニングに出すお洋服を着るからありがたい。嬉しい用事があるということ。この年にならなくても、本当に急で、本当に衝撃的な体験をしている人たちがたくさんいる。辛く悲しい日々を超えて新しい体験に向かうのは躊躇いや恐れも生むけれどそれでも、とがんばっている人たちがその人のペースで歩めるように応援したい。

辻村深月『この夏の星を見る』をまた読み始めた。映画も見たがこうやって文字に戻っても引っ張られることもない。この作家はそれぞれの子どもの心が人との間で見せるうつろいを描写するのが本当にうまい。子どもに関わる支援者の人(多分全ての支援者がそうだと思う。みんなかつてそうだった)は専門的な本を読むのもいいけどこういう本を読むのもいいと思う。個別に見ててもわからない世界がリアルに、ポジティヴに書かれている。特にこの本はコロナ禍の中高生のお話。程度はともかく誰もが無気力、思考停止、排他的な心との葛藤を体験した日々。そこで特に中高生がどんな体験をしていたのか。フィクションだからこそ目を背けずに知れることも多い。空を見上げて繋がりを思った日々の複雑な感情も。爆音に命の危険を感じながら空を見上げる子どもたちが今この瞬間もいる。どこを向いても安心できる場所がない彼らの身体も心も持ち物すべてが守られることを望む大人がマジョリティになりますように。

一昨日、急にテーマを変えて書いた発表原稿は募集要項をみたら全然大会のテーマと関係なかったというか大会のテーマに関係していることが査読のポイントになっていた。あーあ、と思ったけど国外の同業者を意識したらああなってしまったからしかたない。昨年のシドニーで国外の人たちとの交流で自分が日本人であることとか彼らとの歴史とかに関する意識と自覚がすごく強くなった。多くはたやすく言葉にできないことだけどプライベートな場では多くを話し合った。自分の国が持つ加害性を他人事にすることはできない。そこで育っていたらどこかしら何か引き継いでしまっている。それに対する恐れと自分は狂っているのではないか、あるいはこれから狂うのではないか、という恐れは似ているだろうか、そんな問いを症例を通じて考えてきた。とてもデリケートな問題なので少しずつ考えたくて、今回もそのことについて直接書くことはしなかったけどエリクソンを引用した自分には驚いた。大学の頃は発達心理学専攻だったから身近だったエリクソンだが精神分析家になったら精神分析家として身近になった。それが急に自分の前に重要性を持って現れた。何かヒントがあるのだろう。もっと読んでみようと思う。

東京は良いお天気。良い一日を。

作成者: aminooffice

臨床心理士/精神分析家候補生