やっぱり寝不足だと夢がすぐに消えてしまう。良い時間を持てば持つほどそういう時間のために何ができるだろうと考える。そもそも自分にとって良い時間とは何かということから明確にしておいたほうがいいのかもしれない。
先日、泉鏡花の作品をモチーフにした漆の作品や絵本を見た。泉鏡花の母親のお墓がある金沢の卯辰山には言ったことがあるが作品は少ししか読んだことがない。にもかかわらず泉鏡花ときくと先日見たような作品が思い浮かぶのだから不思議だ。お坊さんでもありイラストレーターでもある中川学による絵本も素晴らしかった。ということで久しぶりに読んでみた。今回は短編『化鳥』。最初の数行で「愉快い」が何度も出てくるのが愉快い。泉鏡花は金沢に生まれた。父親は加賀象嵌の彫金師だった。加賀手作り産業に泉鏡花の作品がしっくりくるのは父親の何かを受け継いでいるせいかもしれない。鏡花は幼い頃に母親を亡くし、摩耶夫人を信仰しつづけた、という話は「化鳥」の登場人物の母子と重ね合わせたりする。しかしまあそういう単純な繋げ方はともかく、現実と幻想、人間と動物の間で揺らぐ自分を描き出すのがうますぎる。「化鳥」には感情を表す言葉がたくさん出てくるがその出し方も愉快い。この作品は「青空文庫」でも読めるが装丁にも注目したい。初版本の装丁は国立国会図書館のアーカイブで観られると思う。
うとうとしていたら手が止まっていた。今日も良きものにたくさん出会えますように。今は良くなくてもいずれ良くなることもあるということも忘れませんように。