昨晩の帰り道、オレンジの光が草むらによぎった、気がした。蛍?そんなはずない。ここは新宿と渋谷の挟間。先日の句会の兼題の一つが蛍でいろんな蛍を見たからそんな気がしたのだろう。ほう、ほう、ほーたるこい、と口ずさみながら歩いた。ほたるは「ほうたる」ともいう、と句友の句で知った。これまで「ほ、ほ、ほーたるこい」と歌っていたが「ほう」で歌ってみた。1音入るだけでだいぶ柔らかくなる。蛍の写真を見るのも楽しい。シャッタースピードによって光の形が異なる。つまり蛍は光。昔蛍狩りに行ったと思うが蛍に会えたのだったか。小さな光はみんな蛍と思ってしまい結局本物とは会っていないかもしれない、と蛍の季節になるといつも思う。
昨日はようやくアンドレ・グリーンの論文のざっくりした翻訳をはじめた。まとめて説明できるタイプの論文ではなかったので結果的に翻訳することにした。いろんな原稿を出し終えて6月になってから1日1ページやれば余裕、と思っていたのに学術大会の前日まで原稿を出せず、そこでまず1週間遅れた。そして1週間いろんな本を読んでサボってるうちにアジアンパシフィックカンファレンスの英語レポートを出し忘れていることに気づき、それに時間というより気持ちがとられた。もう3週目、20日になってしまった。DeepLを使ってもアンドレ・グリーンのはフランス語でも難しいのをさらに英訳されてニュアンスが変わったものを訳さねばなので出力された日本語がなんとなくしかわからず結局自分の言葉にしながら理解することになりこんなことをしていては絶対に間に合わないとなっている。それでも昨日は昼間の数時間が空いたので結構なスピードでがんばり半分はできた。あまり頭に残ったり心に響いたりしていないただの作業みたいになっているけどとりあえずやってから読み直そう。読み直してもわからなそうだけど。ざっと最後を見たらどうやらモーリス・ブランショの「答えは問いを不幸にする」が締めにきそう。日本の精神分析界隈ではこれはビオンを通じて有名かもしれないけどアンドレ・グリーンが教えたみたい。ジョン・キーツの「ネガティブ・ケイパビリティ」もビオンを通じて知った人が多いかもしれない。もちろん他の領域ではキーツと出会う別の文脈があると思う。精神分析ではビオンが1967年の講演で引用したキーツの手紙が精神分析とはまさにそういうものである、と的確に示しているだけに有名になった。土居健郎の「わからなさ」を大切にしたのと似ているし、そもそもフロイトが盲目であれと言った。どこで言っていたのか探そうと思ったけど時間がない。その前にビオン、じゃなくてグリーン。この二人は仲が良かったそうでいろんなやりとりをしてきたらしい。それに基づいた論文だから面白くないはずはないと思うのでがんばりましょう。
今日も暑くなりそう。お気をつけてお過ごしくださいね。