春雷、私も聞きたかった。SNSで知った。私はすでに外の音が聞こえない場所にいた。雪は地上でも大きな窓からも見た。昨日の朝のお天気は短時間でくるくる変わって「ああ、季節が動いてる」と思った。
ずっと我慢していた村田沙耶香『世界99』を読み始めた。なので忙しい。ずっと読んでいたい。もうすぐ上巻を読み終える。村田沙耶香の狂気は短編ならではの迫力、ということは全くなく、長編はいよいよ誰がどう狂っているかなんてどうでもよくなるもっと別の緻密で壮大なディストピア、というか「現実」が描かれている。分厚い本を前に抱えたリュックの上に置くようにして読みながら電車に乗っていると背の高いピアスを開けた若者たちが私を邪魔そうに囲んだ。その中のひとりがあからさまに私をどかすために放った言葉がすごかった。直接的に邪魔とかどけとかそういうのではなくこういう言葉をいって多くの人をその場からどかしてきたんだなと思った。でも直接言われていないので無視していたらまた別の、普段はニュースの事件でしか聞かないようなことを言い出した。普段なら怖いし不快だがその時は「これだ」と思った。まさにこの本に書いてある類の言葉を数人の中の主にひとりが吐き出している。他の数人はやばいと思ったのか半分同じことを言いながら半分正反対のことを言い出した。穢れと清めの両方をそれぞれがひとりツッコミのようにやっていた。私はここに書きたくないような言葉たちだが村田沙耶香の本には書いてある。彼女はどこまで毒を抱えておける人なのだろう。私は彼女の本に何度も助けられている。早く続きが読みたい。
どうぞ良い祝日を。