題秋江独釣図 王士禎
一蓑一笠一扁舟
一丈糸綸一寸鉤
一曲高歌一樽酒
一人独釣一江秋
王土禎「秋の川でひとり釣りをする図に題す」という一字詩。小津夜景さんの『カモメの日の読書』(東京四季出版)で知った。真夏に向かうこの時期に秋の川もなかろうにと思うが、今日は季節よりこのミニマムさを味わいたい。世界がもっとミニマムでシンプルだったらといつも願う。そうしたら人はもっと生きやすいのではないだろうか。素朴な遊びを楽しめるのではないだろうか。このブログも1000日連続して書いているらしい。いつでもなんでもあっさり手放してきたわけではないということ。小学校低学年の頃は日記を書いていた。私はとっくに手放したと思っていたが母の本棚にそれを見つけてちょっと読んだよ、と中学生になった身内に言われた。内容に言及する仕方の配慮に私たちがそれぞれに触れられたくない部分、守られるべき場所を持つことを思い出す。私は内容を全く覚えていないが、毎日の出来事を書いては先生に見せて先生がコメントをくれていたらしい。1年生の時にそんなことをしていたのは覚えているが、2年生になってもしていたんだな。その痕跡というか実物がまだあるんだな。ずっとそんなコミュニケーションの相手がいて私はきっと助けられてきたのだろう。ミニマムにシンプルに表層だけで流されるように生きていた時期もあったのだろう。線だけで遊べるウィニコットの誰からも理解されないような部分は深層より表層にあって、線というものは文字のように字義通りにはならない。夏の花の花びらや実をじっと眺めるのはその深淵が覗くことではないだろう。ただそこに置かれているものと一緒にそこに立ち尽くすこと。そんな毎日の今日も一日。一、一、一とひいていくように。