青と黒の、というのは本が入っている箱のことで中の本はグラシン紙に包まれていた。黒か茶色の本。昔はそうやって色で呼ぶことが多かった気がする。赤い本とか。ちなみに私が大好きだった本は「黒いチューリップ」。単に色が好きなのかもしれない。デュマも知らなかったし何も知らず何度も読んでいてはじめて行った海外であるサンディエゴの州立大学の図書館でも探した。そのまま今調べてもthe black tulipでそのままの英語なのに見つからなかった。私は当時どんな言葉で検索をかけていたのか。もう30年以上前の話だけどあの図書館、検索ができた気がする、そういえば。それともコンピューターでの検索ではなかったから調べ方が十分ではなかったのかもしれぬ。覚えていない。
さてContemporary Psychoanalytic Practice by Andre Green French Psychoanalysis: Contemporary Voices, Classical Texts Seriesの一冊目、グリーン自身がウリバリとの対話の中で選出した論文集。英語版への序文は The series editorでThe Freudian Matrix of André Green序文”Why Green?”もよかったHoward B. Levine。
その序文、Limit cases, transformation, and the ordeal of the session: André Green’s extension of Freudian theoryの一部訳を置いておく。
先日、読書会でThe Work of Psychoanalysis Sexuality, Time and the Psychoanalytic Mind By Dana Birksted-Breenの第7章(邦訳だと第6章)Time and the après-coupを読んだと書いた。そこで引用されていた英国精神分析協会の訓練分析家、Rosine Jozef Perelbergのウェブサイトをみていた。ペレルバーグは2023年に精神分析と社会人類学の創造的対話構築による時間性・セクシュアリティ・反ユダヤ主義への取り組みに対してシガニー賞を授与されている。ダナとペレルバーグの共通点は精神分析の古典を網羅的に精読しつつものすごい知識と現代的な視点でそれらを外に開く努力と知力にものすごく秀でた精神分析家であるということかな。
ダナのaprès-coup論文でペレルバーグが引用されるのは彼女がシガニー賞を受賞した理由からも明らかだと思う。ペレルバーグのウェブサイトにKey Conceptsのページがあるがその一番上にAprès-coup, Descriptive and Après-coup, Dynamicの説明がある。いつも通りざっと訳しておく。大変簡潔にまとまっていて文献の紹介もあるので自分で勉強しやすいと思う。ダナの本のaprès-coupの訳は「アプレ・クー」だが翻訳の工夫と苦労が滲み出る訳書。「アプレ・クー」を含むいくつかの訳語については訳者の説明が丁寧になされている。私としては意地でもダナのいうaprès-coupを単なる「事後性」とは異なるものとしてカタカナではなく日本語に変換したいがどうしたらいいものか、ということでペレルバーグの訳には一応定訳である「事後性」を用いた。ペレルバーグのように事後性の前に説明をつけるのがいいと思う。ダナの場合だったら「遂行的事後性」「創発的事後性」とか?ベルクソンを思い浮かべながらそんなことを考えた。
>事後性(Après-coup)――記述的事後性と力動的事後性
infant(乳児)とは過去の赤ん坊のことであり、個人の発達の中で観察可能な存在である。 一方フロイトによれば、infantile(乳児的なるもの)とは、大人の内部にいる子どもであり、構成(construction)の過程を通じてのみ到達することができるものである。 乳児は観察の対象となりうるが、乳児的なるものは、事後性(après-coup)の過程の中で分析家によって再構成されるものである。 この主題は、ペレルバーグの最初の精神分析論文(1991年、ブエノスアイレスでのIPA大会にてチェザーレ・サチェルドーティ賞受賞)の中心でもあった。 その研究は、2008年刊行の著書 『Time, Space and Phantasy』 へと結実した。 ペレルバーグは 『The Controversial Discussions and Après-Coup』(2006, 2008)の中で、次の区別を提案している。記述的事後性(descriptive après-coup)セッションの今‐ここにおける、事後的理解を指す。力動的事後性(dynamic après-coup) フロイトのメタサイコロジーに深く埋め込まれた概念であり、反復強迫、性(sexuality)、時間性(temporality)、そして転移といった概念のネットワークを含意している。
昨晩は、アンドレ・グリーンの関連でJean Guillaumin(1923-2017)とBernard Brusset(1938-)のことを調べたり動画を見たりしていたら眠ってしまった。ふたりともSPPのメンバー。グリーンはThe enigma of guilt and the mystery of shameで羞恥心に関する7つの説明をしているが、そこに登場するのがこの二人。ついでだからそのなかの3つをご紹介。こんな感じ。いつも通り正確には原文をご参照あれ。