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虫、コロナ、映画

昨晩は窓を開けると涼しい風が入ってきた。今朝はどうかなと思って窓を開けた。しばらくするとすっと昨日と同じ風が入ってきた。そして虫の声。

堀本裕樹・桃山鈴子『六四五七五 虫の絵と俳句』(毎日新聞出版)を買わねば。俳句をやっているとなんでも観察するようになるが虫は特に興味深い。鳥取県立博物館企画展「とことん!昆虫展」にも行ったが大賑わい。実に楽しかった。ゴキブリを「かわいいですよね」という会話をするとは思わなかった。8月のオンライン句会のお題に「蟷螂」があって、展覧会でも蟷螂はすごく魅力的だった。でもいい俳句はできなかった。興味関心の向け方が違うのか、語彙が少ないのか、言葉にするって難しい。そのまま描写すればいいってわかってるんだけど。

昨日、あまり行かないスーパーに行ったらパプリカが高くてびっくり。がーん、となって献立変更。いつもすごく簡単なものしか作らないからどうにでもなるとはいえ楽しく思い浮かべていたものを食べられないのはちょっと残念ね。

今またコロナが流行っててニンバスはカミソリの刃を飲み込んだような痛みとか言われててすごく嫌。怖い。薬だって飲めないのでは、そんなだったら。栄養も点滴で摂るとかになったら辛い。周りでコロナに罹った人はいるけど、まだそういう痛みを経験した人の話は聞いていない。自分もいつなるかわからないから、この暑いのに人混みではマスクもしているし、熱中症と同じくらい気をつけてはいるけど、どう気をつけていてもなる、という学びをコロナ禍でした気がする。もちろん予防したほうがしないよりはいいわけだけど。

この前、辻村深月原作の『この夏の星を見る』の映画をみた。コロナ禍の2020年の中高生たちを描いた物語。主演の桜田ひよりは私が原作で持ったイメージとはだいぶ違ったけど素直で力強い主人公を作り上げてた。あと『国宝』で話題の黒川想也や『虎に翼』チームのみなさんとか出演。工藤遥もよかった。役者さんもすごいけど脚本を作る人もすごい。映画だから原作とはちょこちょこ違うわけだけど映像だからできることってこういう映画だと特に感じる。本だと順番に描かれることが同時に一気に描けるし。

まだオンラインで繋がるという手段がなかった学生の頃、大学生ボランティアとして廃校になった小学校で長期休みを不登校の子どもたちと暮らしていた。子どもたちといってもこちらも若かったから年齢の近い子もたくさんいた。町内の運動会とかもそこでしていたから、中心スタッフだった私はいつのまにか地域の皆さんと仲良くなって赤ちゃんのときからのおつきあいの子もできた。私はもともと山育ちだけどウリボーを見たのもそこがはじめてだったし(すっごくかわいい)、いちじくとかの木の実とか山草も自給自足でトリカブトの怖さもそこで実感した。動物も色々いて、音楽室だったところでバンドをやったりすごく大変なこともあったけど大体いつも楽しく面白かった。

昨日、ふと、当時はたしか中学生だった子を車で送っていった夜のことを思い出してうるっときた。まだ携帯とか当たり前ではない時代、常勤のスタッフだけが大きな携帯を持っていた。ある理由で、その子が電話をかけなければならなくなった。公衆電話を探すこともできたがまだ時間がかかりそうだった。携帯電話を使うか聞くと使うという。驚いた。狭い車内でその子が電話をするのを私たちは黙って、ただ静かにしていた。一緒に暮らすように過ごしていたその子が勇気を振り絞った時間だった。あの緊張感、あの後の安堵、何も言わず少し遠回りして東京タワーがきれいに見える道を選んだスタッフの思いやり、興奮気味のその子の歓声。居場所を失った子どもたちやひきこもりと言われる人たちとただただ一緒に過ごす。若い頃はそういうことばかりしていた。私も居場所を求めていたのかもしれない。コロナ禍でそういう場所はどう機能したのだろう。あるいはどういう危機に晒されたのだろう。辻村深月の本や今回の映画のように少しずつ振り返りはされるだろう。するべきだろう。

今朝はまだ太陽の気配がない。少しだけ涼しそう。もうそろそろ35度を下回る日々になってほしい。これでは身体が持たない。暑熱順化はできていると思うが。引き続き熱中症にも気をつけて過ごしましょう。良い一日になりますように。

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俳句 読書

句友とか『青春と読書』とか。

「花の郷 バター」

美味しそうなお名前。美味しいです。町田の社会福祉法人花の郷さんのクッキーをいただきました。

おー、句友の句がNHK俳句に!加藤シゲアキが好きな句と言っている。句も人も素敵な友がたくさんです。大好きな千野千佳さんも北斗賞の佳作に入ったし。みんないつもすごい。千佳さんの三句は昨日『月刊 俳句界 2月号』で読んだ。特別だけど普通、でもやっぱりなんだか特別、今回もそんな景色が爽やかでした。

そして私たちの俳句の先生、堀本裕樹先生が毎月連載されていた「才人と俳人 俳句交換句ッ記」は最終回。ゲストはやはり又吉直樹。やっぱりとてもよかった。載っているのは集英社のPR誌『青春と読書』です。

そしてこの2月号には山本貴光さんが今野真二『「鬱屈」の時代を読む』(試し読みあり、集英社新書)の書評を書いておられます。前にゲンロンカフェでお二人の対談をみましたけど日本語の言語学についてとても楽しくおしゃべりしててホヘーすげーと思いながら楽しみました。ということで読み始めたらこりゃまたすごい。言葉を丁寧に探索していくのが言語学なわけだけどこの本は言葉にならない、あるいはまだ言葉としての形も持っていないものがどう言葉になっていくのかという言語化のプロセスを本当に豊富な文献の引用を通じて緻密に記述、描写してくれています。普段やりがちな雑な言葉の使用(例えば「レッテル」貼り)に対する反省も促される一冊になりそうです(まだ途中)。

ちなみに今野真二『日本語の教養100』(河出新書)刊行のときは山本貴光さんと往復書簡を交わされていました。それはこちらで読めます。

今日も色々(雑かな)あるでしょう。鬱屈した「気持ち・感情」はなかなか言葉にならないかもしれないけれど言葉を大切に人を大切につまりは自分を大切になんとか過ごしましょう。