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精神分析

季語「宝船」とか。


毎朝毎朝きれいな空。俳句が降りてこないかしら。空、雲、月、星が全て季語になっているのは冬と夏だけかな。「冬の空」とか「冬の雲」とか。春と秋は「星」が季語ではないかも。昨晩はオンライン句会の選句の締め切りだった。「夏雲システム」というオンライン句会のために作られたすごいシステムがあるのだが私たちも初期からそれを利用させていただいている。私たちは選句締切と同時に作者と点数が公開される設定にしている。今回も面白い句が多かった。参加者それぞれが題を出す型式でやっている。出された季語は使っても使わなくてもいい。今回は「宝船」という季語がお題のひとつにあり、それを使った句が大変面白かった。宝船というのは大抵七福神がたくさんの宝物と乗っている帆をいっぱいに張った船の図案。めでたい初夢を見るために枕の下にしいて寝たりするものだ。今回は宝船がやってくる様子が見えてくる句が大変面白く、穏やかだったり賑やかだったりするその来方がその人ならではの言葉で書かれていた。七福神そのものを書いていなくても大体全員揃っている船を思い浮かべる人が多いだろうけど今回は帆がなくなってしまった句があって愉快だった。江戸時代とは紙も印刷方法も異なるからな、と書けば想像がつくだろうか。意外性のある句こそ面白いのだが日常はあえて言葉にすればどれも結構意外なので見たまま切り取っておくというのは面白い作業だと思う。と書いて私の俳句熱が高まるわけではないのだがこの文芸を面白いと思う気持ちは変わらない。この小さな句会はいまや結社の実力者である人たちが集まっていて私だけなんだか場違いな気もするが私が作ったので彼らの力の抜けた俳句に出会えて嬉しい。こういう句会はそれぞれが実験的に使えるから良い。俳句は賞が絡む文化だから結構体育会系なのだ。私は実際は体育会系育ちなはずなんだけどそこでもゆるゆるダラダラだったせいか俳句においてもそうなっている。今回は選評にも「面白い」という言葉が多かったのも面白かった。俳句は空を見なくても(見えちゃうけど)花の名前を知らなくても読めば浮かんでくる景色が凝縮された17文字なのでお得だ。最中みたいのにお湯をかけると中から色々出てくるお吸い物があるでしょう。あんな感じ。読むってそういう楽しみ。知識はとても大切だけど人との関わりが言葉を見つけさせる。私の仕事も幸せなことにそういう仕事だ。色々な人の言葉を聞き、彼らだけが知っている景色を知る。私たちは同じものを見ていても全く違うものを見ているものだ。切り取り方というのは本当にそれぞれで語り方もそれぞれ。フロイトが驚きを持って患者の言葉に耳を傾けることが大切だと言ったのはあえて言わずともそうなってしまうのが精神分析でありとても自然なことを言葉にしただけなのだ。見えたものをそのまま言葉にする俳句と同じ。私もこんなに長く会っている人なのに毎回驚かされたりしているのだから驚く。人の心の世界はわからないからこそ、自分で喋ってみてそんなこと考えていた自分にびっくりということがよく起きる。醍醐味と可能性。傷や事件は心に不自由をもたらすけどそれはまた別の話、というか時間がなくなってしまった。

今朝はしょうが紅茶と善行の洋菓子屋さんのショコラオランジュでした!美味しかった。

作成者: aminooffice

臨床心理士/精神分析家候補生