大寒。とはいえ6時の時点で6度ある。東京の日の出は6時49分。少しずつ空が白っぽくなってきた。沖縄の日の出は7時18分。冬に西に旅に行くと早朝散歩はいつも真っ暗。その分暗くなるのは遅い。光のあり方は生活にかなり影響を与えているだろうからその土地の風土を知ることはとても大切。大学のとき、何かの授業で風土について色々と学んだ。和辻哲郎を読むばかりでなく、何の授業だったか。「風土」という言葉の印象ばかり強く肝心の中身を覚えていない。
『阿修羅のごとく』で満足したのに『アンメット-ある脳外科医の日記-』を見始めて1週間で見終わった。アンメットは満たされていない、という意味なのね。満たされるってなにかしら、とは思うけど若い頃よりは確実に満たされやすくなっている。そしておそらくこれは記憶容量と関連している、と思う。ドラマの影響で言っているのではなくて。いや、もしかしたらそうかもしれないけど。精神病院で働いていた頃、神経心理検査を色々実施した。ドラマで失語症や半側空間無視に対する新たな理解が加わった。症状の個別性の部分ではあるけど。ドラマでは高次脳機能障害のように器質的な病変が存在する症状がそれだけでは説明がつかない記憶のあり方とともに密な人間関係で描かれていて何度も泣いた。主人公二人の相槌の仕方が印象に残った。杉咲花の食べっぷりも素敵であんな小さい顔の小さな口でどうしてそんなに大きい一口が可能なのかとびっくり。
『阿修羅のごとく』で昭和を満喫したが、週末は俳句で明治、大正、昭和を感じた。新宿区百人町の俳句文学館で昨年11月から開催されている「俳人協会所蔵名品展 近現代俳句の歩み1」を鑑賞した。とても小さな展示室は17音の世界にぴったりだった。作品数としては多くないがおなかいっぱいになった。たった17音が刺激する世界はとても広いのでこれ以上あると疲れて丁寧に鑑賞できなかったと思う。文字のインパクトもすごかった。五大家俳句寄書の軸装や本人直筆の色紙や短冊で俳句をみた。五大家とは高浜虚子と4S(青畝、誓子、素十、秋櫻子のこと。
蚊いぶしの紬をさらふ追風哉 阿波野青畝
畑打や池田の鯉を手捕つたり 山口誓子
餅花の火燵布団に照りはえぬ 高浜虚子
芦刈のそこらさまよふ一人かな 高野素十
啄木鳥や落ち葉をいそぐ牧の木々 水原秋桜子
秋桜子の句は知っていた。4Sの句でもネット上では探せないものもあり、彼らの作品の膨大さを思った。
小鳥来て午後の紅茶のほしきころ 富安風生
麗しき春の七曜またはじまる 山口誓子
雪はしづかにゆたかにはやし屍室(かばねしつ)石田波郷
などの句も文字と共に心に残った。
昨年5月、老衰で亡くなった鷹羽狩行を偲ぶコーナーもあった。
数といふ美しきもの手毬唄 鷹羽狩行
しずけさに加はる跳ねてゐし炭も 鷹羽狩行
にウキウキした。
紅梅や枝々は空奪ひあひ 鷹羽狩行
有名な一句。やはり迫力がすごい。近所の公園では梅が咲き始めた。この景色は私も実景として体験できる。俳句は実景が基本なのがいい。
さて、今日は大寒。冬苦手なのに冬を満喫したくてスーパーのお菓子の棚で「冬限定」と書いてあるお菓子を買い占めてきた。といっても3種類しか見つけられなかった。
大寒の天気つゞきの檜垣かな 富安風生
大寒と敵のごとく対ひたり 富安風生
富安風生の句も心に残るものが多いことに気づいた。好きなのかもしれない。どうぞ良い一日を。暖かくしてお過ごしください。