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俳句 読書

冬らしさ、宇多喜代子『俳句と歩く』を少し読んだ。

今朝は少し空の様子が違う。冬らしいというのはこういう空のことかもしれない。天気予報は晴れみたい。昨日の西日もいかにも冬で新宿方面から西へ向かう人はみんな片手をあげて強い日差しを遮っていた。ものすごい発光。この前、とてもよく晴れた日、少し川沿いを散歩した。前から来る人のボタンとかランニング中の人の袖の一部とかみんなどこかしら光っていて冬だなと一句作った。しばらく歩くと小さな白い鳥が川縁をぴょこぴょこ歩いていた。多分ハクセキレイ。その歩みに合わせてその水浴びを観察した。尾羽をぴょこんと水につけては飛び上がるくせに川縁ぎりぎりのところを歩いててとてもかわいい。今日はあったかいから入っちゃおうかな、でもお水は冷たいからな、みたいな逡巡に見えた。これも句にした。でも途中から「尾羽ぴょこぴょこみぴょこぴょこ」→「尾羽ぴょこぴょこ日向ぼこ」とかなってしまった。音は気に入ってるけどパクリだしねえ。この前、ちょっと図書館に寄ったら宇多喜代子『俳句と歩く』(角川俳句ライブラリー)を見つけてパラパラした。鈴木しづ子を探し疲れ果て出会った老人の一瞬と宇多さんの一瞬の描き方にグッときた。戦争を知っている世代にしかわからない記憶の作動がある。そして養蚕の話。蚕を飼うことも桑の葉畑も私にとって当たり前の景色で、体験だった。でもそれもいつの間にか見えなくなった。宇多喜代子さんは昭和10年生まれ。私がこれからどんな長生きをしたとしてもあんな語り方はできないだろう。これからもし私も戦争を体験するとしても。とても薄っぺらい時代を生きてきたのかもしれない。だから先達の語りに惹かれるというのはある。読書の恵みは計り知れない。みんないい本と出会えますように。

作成者: aminooffice

臨床心理士/精神分析家候補生