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読書

生活のリアル、本とか能登とか。

この前、怪しい雰囲気の雑居ビルのエレベーターに乗ったんだけどのぼって用事すませておりてくる間に会った人たちがみんな個性的だった。その日はそのあとオフィスに戻るまでもいろんな人に会ってちょっとした言葉を交わしたりなんか世の中のリアルという気がした。いろんな空模様のなかを自分の脚で歩くのとオンラインで似たような言葉を眺めるのとではずいぶん違う。おもしろかった。一方、初期のオンラインも面白かったな。色々思い出してフフフとなる。バカだったな、恥ずかしいな、と思うこともたくさん。黒歴史とは思わない。私はその言葉が嫌いだ。そういえば向田邦子のエッセイに「お辞儀」というのがある。『父の詫び状』にはいっている。そのはじまりは留守番電話に残された様々なメッセージ。さっき書きながらふと思い出した。生活にリアルさを感じるとき、向田邦子の文章を思い出す。森茉莉や幸田文の文章も。向田邦子は51歳で死んだ。飛行機事故で。今の私と同じ年で。だからなにというわけではない。母親の本棚から知ったずっと好きな作家だ。

最近好きな歌人が「ちょうどいい」という言葉に対する反発をかいていた。すごくわかると思った。少なくともそれ誉め言葉じゃなくない?と私も思う。向田邦子とのつながりでこれを思い出したのだがなんのことだか忘れてしまった。一瞬、強い気持ちが動いたのだが、それがその歌人の言葉を思い出したことでフフフに変わってしまったからだろう。自分の気持ちを大きく揺るがすものがあれば文章は書ける、といったのも向田邦子だと思うが、私はあまりそういうものがないので文章にしたいぞ、という欲望もない。精神分析家になるための修了論文を書いたり、アジアンパシフィックでの発表を原稿にしたらなんだか落ち着いてしまった。強い実感を言葉にできたのはよい体験だった。村田沙耶香みたいな小説が書きたい、とAIに小説談義をもちかけたが全然おもしろくならなかったのでやめたし。私は読む専門だな。最近も何冊か面白いのを読んでいたが心に残ったのはそんなに読者が多くなさそうなnoteだったりしたのでなんとなく心にしまっておいた。村田沙耶香の新刊は大作なせいか私が読み終わったときはあまり感想がでておらず、自分で布教してしまった。村田沙耶香に関しては布教という用語を使いたくなる。

昨晩、帰宅して『心理臨床の広場』をめくった。少し前に届いていたと思うが開封していなかった。今回は巻頭対談が『虎に翼』脚本家の吉田恵梨香さんと神田橋先生との共著『スクールカウンセリング モデル100例』の著者、嘉嶋領子さん。嘉嶋さんの『スクールカウンセリング モデル100例』は2006年の出版だが、私の周りでは名著とかなり話題になった。神田橋合宿に行ったりしてみんな神田橋先生が身近だったせいかもしれない。神田橋先生のチョイスはいつも正しいのだ、という雰囲気が当時はあった。みんな同じワインを買うとか。九州まで陪席に通っていた人もグループにはいた。私はそういうタイプではなかったが、実用というニードからその本を持っている。嘉嶋さんは「かしまえりこ」と書くこともあるというかむしろ私はひらがなで覚えてしまっていたが使い分けをされているのだろう。

金沢と能登をつなぐ「のと里山海道」がなかなか繋がらないらしい。昨年行った羽咋市の「千里浜なぎさドライブウェイ」はその途中で通行止めは解除されていたと思う。私は自転車だったので所々通行止めの文字は見たけど無事に行けた。千里浜なぎさドライヴウェイは名前の通り、波打ち際を自転車や車で走ることができる。気をつけないと埋もれるけどあんなに長く海岸線を自転車で走るなんてはじめてで不思議な気持ちになって楽しかった。日焼け止めを塗るの忘れてすごく日焼けしたのは辛かったけど羽咋は楽しい街だったな。その時は千里浜海岸ではじめて復興花火が開催される日で、ホテルの人もはじめてのことだからきちんと見えるかどうかわからないけどと言いつつ案内してくれた。私は肝心のその時間には寝てしまっていたが海辺からきれいに見えたという。翌朝、その場所へ散歩にいったらきれいに片付いていたけど誰もいない朝の海も最高だった。羽咋のことはすでにいろいろ書いた気がする。宇宙科学博物館コスモアイル羽咋が意外に最高だとか。旅では駅員さんや街の人とのちょっとした会話とかがとても楽しいのだけど羽咋でもそれがあった。今度は七尾。七尾市と穴水町の区間は復旧に向けた工事が今月されたばかりだけどどうなっただろう。調べると観光として行けるところは増えているがまだ行けないところもたくさんある。できるだけ人が入ることで復興の必要性は増すだろうから少なくとも数で協力したい。

本を読み旅をする。生活をする。仕事する。がんばろう。

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俳句 言葉

甘夏、テレビノークスペシャル「能登とつなぐ」

すっかり朝の光。日の出が急に早くなったのかと思ってしまうけどそんなはずはなく日々が着々と過ぎているだけ。こんないいお天気な感じなのにこれから荒れるのですって。雷怖い。気をつけましょう。

先日、大きな甘夏をもらった。ゴロンゴロンと冷蔵庫に入れた。甘酸っぱくて美味しい。「俳誌のサロン」にこんな俳句が載っていた。

エプロンに甘夏柑の重さかな 須賀敏子

3月23日に愛媛県今治市で発生した林野火災がようやく「鎮火」とのこと。発生から23日。被害は数字以上のものがあるのだろう。というか数字からできるだけ正確に現地の被害状況を掴めるようにならないといけないのだろう。十分な支援というのも量だけではないわけでどこにどのように何をどのくらいということを考えるには現場の状況がわからないといけないだろうし、支援は本当に難しい。東日本大震災のとき、私たちが避難所へ出向いたときはトラックで提供した暖かい食べ物が最も喜ばれた。自分たちもそれがいいだろうと思ってやっていることでも実際の受け取られ方を知ると言葉をなくす。冷たいおにぎりに飽きる、という体験を実際に言葉で聞くこと。そのインパクトのもとに再び被災地へ出向くこと。支援は継続的に、対話しながら、学びならやっていくことが最低限必要という、一見当たり前のことがいかに難しいか。震災が起きるたびに「あのときの体験はなぜ生かされないのか」「あの体験から何を学んだのか」という言葉が聞かれる。瀬尾夏美さんたちNOOKが行う災禍を経験した人たち、現地に入った人たちの声、作品、など様々な記録を残すプロジェクト「カロクリサイクル」は本当に大切だ。各自治体にこのような民間組織とスムーズかつ強力に連携できる形態の組織ができたらいいなと思う。3月29日にNOOKはテレビノークスペシャル『能登とつなぐ』と題した配信を行い、能登で起きている出来事を共有してくれた。アーカイブがあるのでぜひ。長い番組だが七尾市の方が「(輪島、珠洲だけでなく)七尾も被災地なのになあ」とおっしゃっていた。輪島市に次いで2番目に被害が多い地域だという。私もよくわかっていなかったが今度七尾市に行くので色々調べた。 映画にもなった漫画「君は放課後インソムニア」(著・オジロマコト/小学館)の舞台。七尾市のウェブサイトがファンマップを公開している。何をきっかけにしてもいい。多くの人が様々な被災地に実際に足を踏み入れてみる機会を持てますように。

空が暗く、風が冷たくなってきた。嫌なお天気。気をつけて出かけましょう。虹が出てるよ。