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くりかえし

私のオフィスからは明治神宮がきれいに見える。目線の先に広がる森の下で誰がどんなことをしているのかは知らない。初夏を迎えたことははっきりとわかった。

月の満ち欠けも感じることができる。仕事を終えて電気を消してもう一度カーテンの向こうを振り返る。さっきよりずっと明るい満月が見えた。たなびく雲の、という歌を思い出す日もある。時々色を変える東京タワーの見え方も日々違う。

ほとんど時計をみなかった。到着時刻を知らせるメッセージが届いたがこの後の予定はだいぶあとだ。領収書の整理をしたり、視界に入った埃を拭いてみたり、積まれた本を棚にしまったり、友人の作品を眺めたりしているうちにチャイムが鳴った。

窓を大きく開けていたので音に気付くのが遅れた気がした。ちょっと待たせてしまったか、と思いつつ迎え入れる。特になにをするわけでなくただ話したり黙ったりした。その人は眠そうだった。私はどうだったのだろう。あまり何も考えていなかったみたい。

ほとんど時計をみなかったな、とひとりになってから思った。ただぼんやり過ごすとかできない、という友人たちの顔を思い出した。私はいくらでもできる。

普段は時間を常に気にしている。というか時間がくればいつもと同じことがはじまって、時間がくればそれが終わる。その繰り返しを過ごしている。

オフィスにきてカーテンの向こう、ああ、5月だ、と感じる。私のオフィスはひんやりしている。外はあんなに暑かったのに。

季節がめぐる。私たちは会い続ける。私たちと季節は常に同期しながら色を変えていく。これまでもこれからもずっとそうだろう。ずっと同じ人とずっと同じ場所でずっと同じことをしているかどうかはわからない。でも何かが変わっても私は私で季節とともに生きていくのだろう。

休日はいい。素朴な気づきにこころが静かになる。

もうすぐ9時だ。空から闇が抜けて水色になる頃にはすでに起きていた。今日もあの森を眺めて、電気を消して空を振り返る。一日が過ぎて一日が始まる。その繰り返しのなかに今日もいる。