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精神分析

当時

少し時間ができたので少し歩くところで待ち合わせをした。時間がなくなって通ることもなくなったその道は昔自転車で家庭教師に通っていた道だった。中学のときから不登校になり家の状況もなかなか複雑で当時、その子と定期的に会えるのは私だけだった。当時はまだポケモンが100をちょっと超えたくらいしかいなかった。その子のおかげで私はポケモンに相当詳しかった。いろんなことはもう忘れてしまったがその子は不登校を経験した子が多く通うという高校へ進学した。学校へ行けるようになり私との関係も終わった。そう思ったある日、その子の祖母から電話がかかってきた。当時はまだ電話が主な連絡手段だった。ものすごく慌てた様子だった。その子がいなくなったという。私は祖母に状況を確かめつつその子がひとりでいなくなるということがあるだろうか、いや、誰かと一緒にいなくなるようになったのだろうか、など考えたりした。しかしよく考えればその時間はそれほど慌てなくても大丈夫な時間でもあった。

数時間して母親から電話がかかってきた。無事だったという。はじめて母の声を聞いた。それまでのお礼を言われた。とてもいい子だった。あまり言葉のやりとりはしなかったけど私たちは小さく、よく笑った。静かに淡々と過ごしてもふと愉快な出来事が生じたりするのだから一緒にいるというのは面白い。なぜか二人で体験した修羅場もあった。時折祖母に誘われるままに台所で一緒にごはんをいただいた。祖母の時代の風習に驚きつつ、家庭の文化の継承についてとても興味深く思ったのを覚えている。

私も母にお礼を言った。おばあちゃんにも本当にお世話になったことを伝え、くれぐれもよろしくと伝えた。その電話以降、やりとりはあっただろうか。なかった気がする。お元気だろうか。もうすっかり大人の年齢になったに違いないその子は当時すでに私よりずっと背が高かった。ご家族みんな元気でいてほしい。いろんなことを教えてくれてありがとう。

今日もいろんな心と出会う。わかるわからないのお話ではないところで静かに昨日やこの1週間の話を聞いたりする。話はいつのまにか状況から離れていつもの心の話になるだろう。プロセスが全て。精神分析においては。生活と同じ。

東京は今日は晴れらしい。どの地域の方もどうかお元気で。良い1日でありますように。

作成者: aminooffice

臨床心理士/精神分析家候補生