涼しい。鳩が同じリズムでないて、とまって、を繰り返している。
2026年5月4日に配信されたIPA Podcast Talks On Psychoanalysisを聞いた。このポッドキャストは補足用のテキストがあってご本人がそれを読み上げてくれるのがいい。声が持つ情報って多い。
この回はスペインのマドリードで開業しているマドリード精神分析協会(APM)の訓練分析家、Dr.アリエル・リベルマン(Ariel Liberman)のお話。題はPsychic change and enactment:some reflections。
リベルマンはAPMでさまざまな要職を歴任。複数の論文を執筆しているほか、2冊の著書、“An Introduction to the Work of D.W. Winnicott”(2011)および “Conversations on Psychoanalysis with Stephen A. Mitchell”(2022)を出版とのこと。
この論文はWinnicott (1954)とWilly Baranger(1979)と、なんとBill Evans(大好き)の引用から始まっていてOgdenの引用も多いというだけでもいい。フリーで読めるし聴けるからぜひ。
後半のビル・エヴァンスの引用に戻るところから少し訳しておく。
“「クラシック音楽において、ミスはミスである。しかしジャズにおいて、ミスは、その後に続くもの(事後的/a posteriori)によって正当化され得るし、実際に正当化されなければならない」
ビル・エヴァンスは、私が伝えようとしたことの精神を要約しています。つまり、「技術的ミス」がいかに文脈と理解に依存し、それが単なるclosureではなくopeningになりうるかということです。スコア(楽譜)への参照がほぼ絶対的でありミスが絶対的なものであるクラシックの世界とは対照的に、ジャズのメタファーを借りれば、演奏されているハーモニーとその変容の可能性を絶えず理解し続けることが、一見ミスとされるものの中に潜在的な意味を回復させ、あるいはエヴァンスが言うように強制し、それを許容するのです。ミスが音楽テーマの継続の中でreharmonizeされ、回復され、前例のない可能性を切り拓く——つまり音楽表現の糧となるならば、それはもはやミスとして固定されることはありません。”
論文と関係ないがフロイトの著作が全集として最初に訳されたのがスペインだそう。翻訳者はスペインのドイツ文学研究者のLuis López-Ballesteros。フロイトからの手紙はFreud, S. (1923) Letter to Señtor Luis Lopez-Ballesteros Y De Torres. The Standard Edition of the Complete Psychological Works of Sigmund Freud 19:289/RSE 19, Page 295
フロイトはこのルイス・ロペス=バジェステロス・イ・デ・トーレス氏への手紙で、『ドン・キホーテ』を原文で読みたいという願いから、独学で美しいカスティーリャ語(スペイン語)を学んだと書いている。フロイトの文学に対する情熱もすごい。
そしてルイス・ロペス=バジェステロスが「医師でも精神科医でもないにもかかわらず、これほど複雑で、ときには難解ですらある主題について、これほど完全かつ正確な理解」をしたことに驚きを見せている。
精神分析はのちにスペイン、そしてアルゼンチンをはじめとするラテンアメリカ世界へ深く根を下ろしていったわけだけど、ルイス・ロペス=バジェステロスによる翻訳はその出発点となったのだろう。
まだ鳩が同じ距離で同じリズムでないている。よい一日になりますように。

