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精神分析

狩野力八郎先生の本

4月29日のにっぽんのいろは躑躅色だそう。今年もツツジを満喫した。ワイルドにそこら中に咲いていてくれるし根津神社みたいに見事に整えられているのもあるし。ツツジやフジは私の中では5月の花なのだけど4月の終わりと合わせて花の色をなくしていく様子。毎年こんなに早かったっけと言っている気がするからGW前の花なのかな。また来年。きっとすぐ会える。でも自分がどうなっているかは全く不明なんだよね。不思議。花だって突然大地が割れたり流されたりしてしまうことはあるだろうけど人間の方が不確定要素が多いと思う。つい数日前に普通に笑って話した人が突然入院してすぐに亡くなったことがある。本人が一番びっくりしたのではないだろうか。元々病気を抱えていたとはいえあのときの時間の流れはおかしかった。コロナ禍で火葬場が混んでいるという話も普通にされお葬式も身内だけでせざるを得ない時期だった。死は悲しいのだけどそれだけではなくてその人が私の心の中でいかに生き続けているかをも事後的に教えてくれた。先日、2015年に亡くなられた狩野力八郎先生が残された蔵書の無料頒布会に伺った。仕事の合間にサッといったのでじっくり見られていないが古典はあまり多くなかった印象。もう絶版になっていると思われる本を数冊いただいた。節度を持って、と口頭で言われただけで何冊いただいてもよかったのだが節度も荷物の限界もあった。私自身が古くなってきて今は絶版である本を普通に買えていた時代の人なんだなとも思った。ただ、私にとってこの会は単なる本の頒布会ではなくて狩野先生を強く意識する会で、先生はこういう本も読んでいらしたんだな、と少し本に触れて密かに狩野先生を偲んだ。先生のゼミ生だった方に声をかけられて「狩野先生」という言葉を交わすことができてなんとなくよかった。次世代をきちんと育てられた先生だった。私は先生には何度かケースを見ていただきとても大変な局面を支えていただいた。お会いするたびに気にかけてくださった。狩野先生は69歳でまだお若かった。亡くなってからもう10年近く経つのか。先生に推薦書を書いていただき無事に候補生になれてからも同じくらいの時が経つ。今回の頒布会で先生をこうして思い出すことができてよかった。本当にいろんな先生方のお世話になって今がある。先生方の時代の精神分析は豊かだったと思う。狩野先生は『精神分析になじむ 狩野力八郎著作集1』の中で古澤平作、小此木啓吾の仕事に触れつつ「岩崎、神田橋、小倉、牛島といったいわゆる第三世代、北山、相田、皆川、狩野といった第四世代」と書かれている。ここ数年で亡くなられた先生もおられるが、お名前を見るだけですごい時代だったと思う。来年どうなるかわからないとしてもというか今日、明日どうなるかわからないとしてもこういう今があることはありがたいことだと思う。はあ。がんばらねばなあ。狩野先生、どうもありがとうございました。

作成者: aminooffice

臨床心理士/精神分析家候補生