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読書

11月5日朝

できるだけ長く布団の中にいるようにしている。今日は冬眠していなくても大丈夫そうな気温っぽいけどできるだけのんびりと。起きてしまうとろくなことを考えないから。また生きたまま今日がきてしまったと泣き始める人もいるでしょう。そんな簡単じゃないよね。

レベッカ・ソルニットの『私のいない部屋』を久しぶりにパラパラしていた。「いつか追い出されてしまうのではないか」私たちが持ち続ける不安のひとつだと思う。「居場所」という言葉と関連づけられることも多いだろう。私はここにいていいのだろうか。受け入れてもらえるのだろうか。不安はそこにいるための努力を引き起こす。我慢や無理、それらに耐えられなくなっての行動化などなど。努力など、と私は思う。本当はそんなことしなくてもいいのに。色々ありながらやっていくのが普通なんだから。でも現実は違う。

友人が冬支度のような素敵なケーキを送ってくれた。アップルパイとチーズケーキ。彼女は井の頭線沿いに小さなお店を構えていた。とても素敵なお店で素材もお皿も自分で契約した生産者や作り手たちとこだわり抜く派手さのないこじんまりと居心地のよい店だった。順調にやっていけるかと思っていたがそのうちに特定の男性が現れるようになったという。私はなぜかその時期の彼女に会っておらず県外に移転し再び頒布形式でケーキを売るようになったあとに聞いた。彼女からではなかったかもしれない。ほぼ密室になる狭さの店は居心地のよい空間ではなくなってしまったらしかった。彼女は店を閉じた。

あれからもう20年以上経つ。彼女から年に3、4回届く小さな箱を開けると丁寧に梱包されたケーキの上にほぼ正方形の小さな便箋2枚、時には3枚が置かれている。そこにはいつもケーキのことと一緒に近況が綴られている。今回もそうだった。彼女が住む土地では森の葉っぱが黄色く輝いているそうだ。でもそろそろそれも終わりとのこと。水のきれいな山里に移住したあとの彼女にも色々あった。もちろんとても素敵なことも。色々ある。生活ってそういうもの、と割り切ることは難しいけど長く続けていればなにかしら変化は起きる。今日は彼女に素敵なことが起きますように。もちろんみんなにも。良い一日を。