早寝したのでいつも以上に早起き。東の空の下のほうに濃いめの赤がたまっているのもきれい。あっというまに空の暗さが抜けていく。
昨日書いたフランスの精神分析家、ソフィー・モルゲンシュテルン(Sophie Morgenstern)のことを調べたので、もう少し書いておく。だってまた忘れられてしまったら大変だから。
精神分析のパイオニアであるにもかかわらず、その貢献が十分に語られてこなかった女性たちに関する本として、Early Women Psychoanalysts: History, Biography, and Contemporary Relevance(Klara Naszkowska編、2024年、Routledge)のことを何度も取り上げたくなるのも、同じ動機からだろう。
Geissmann, C., & Geissmann, P. (1998). Sophie Morgenstern: The application of child psychoanalysis in France. In A History of Child Psychoanalysis(Chapter 8, pp. 124–131). Routledge.(訳すとしたらこうか。ガイスマン,C.・ガイスマン,P.(1998)「ソフィー・モルゲンシュテルン――フランスにおける子どもの精神分析の適用」『子どもの精神分析の歴史』第8章,pp. 124–131,Routledge.)
この論考も似た動機から書かれたのだろう、と思うのは、最後にこう書かれているからである。モルゲンシュテルンの紹介にもなっているので、長めに訳したものをおいておく。
>ソフィー・モルゲンシュテルンは、フランスで子どもの精神分析を実践した最初期の精神分析家の一人であった。彼女は1925年から1940年まで、パリのサルペトリエール大学病院の児童精神医学部門で、ジョルジュ・ウイエ教授とともに働いた。15本の論文と1冊の著書を含む数多くの業績は、彼女の精力的な学術活動を示している。また、その仕事が複数の権威ある学術誌に掲載されたことは、同僚たちから評価されていたことを物語っている。
彼女の仕事は、一方ではジークムント・フロイトの、他方ではアンナ・フロイトの仕事を継承するものであった。当時、彼女は非常に重要な位置を占めていた。彼女の教え子の一人が、フランソワーズ・ドルトFrançoise Dolto-Maretteであった。
ドルトは、とりわけ子どもの描画に関して、モルゲンシュテルンの教えを受けたことを認めていた。しかし、ドルトの著作のなかでモルゲンシュテルンに言及されることは、きわめてまれである。
なぜ彼女が忘れ去られてしまったのか、理解するのは難しい。
それは、第二次世界大戦がフランスにもたらした激動と関係しているのだろうか。それとも、ジョルジュ・ウイエGeorges Heuyerが子どもの精神分析から距離を置くという方向転換をしたことと、より深く関係しているのだろうか。もっとも、ウイエは1952年に出版された著書でも、彼女を高く評価し続けていたのだが。
彼女が忘れられたのは、その悲劇的な死によるものだろうか。
自死が残された人々に罪悪感を抱かせることはよく知られている。そして、ナチスによるパリ占領の時期に起きた彼女の自死をめぐる事情は、その罪悪感をさらに強めたであろう。
彼女の後を継ぐ人々は現れた。しかし、精神分析家たちにしては奇妙なことに、彼らは自分たちの集合的な過去を忘れてしまったのである。
彼女の名が挙げられるのは、子どもの描画や心因性緘黙の症例に関連して、時折言及される場合に限られるようになった。(引用ここまで)
もちろん、彼女の名が完全に忘れ去られていたというわけではない。私がフランスの精神分析について調べるときにもっとも参照するパリ精神分析協会(Société Psychanalytique de Paris, SPP)のサイトにはこんな風に登場する。
Eugénie Sokolnicka, d’origine polonaise, proche de Jung, analysée par Freud puis par Ferenczi, vint s’installer en France en 1921 et fut la première à pratiquer la psychanalyse. Elle analysa René Laforgue, Edouard Pichon et Sophie Morgenstern.
>ポーランド出身でユングと親交が深く、フロイト、そして後にフェレンツィの分析を受けたウジェニー・ソコルニツカは、1921年にフランスに移住し、精神分析を実践した最初の人物となった。彼女はルネ・ラフォルグ、エドゥアール・ピション、ソフィー・モルゲンシュテルンらを分析した。
ソコルニツカはモルゲンシュタインはEarly Women Psychoanalystsの同じ章で「ポーランド系ユダヤ人の女性の先駆者」として登場する。著者は、精神分析家の自殺(psychosuiciders)について調べているときに二人のことを知ったという。二人とも若くして、しかもパリで自殺している。
つながりのなかで欠かせない人を知ることも大事だが、知られていないことが欠けているということではないのはいうまでもない。
毎日、単に、歴史は大事、と言い続けているような気がするが、実際そうなのだから自分にも言い続けたい。そうじゃないとすぐ忘れちゃうのが人間かもしれない。というか私がそうなのだが、それではいけないのである。だからみんなで協力して忘れずにいたい。
東京はいいお天気になるみたい。良い一日になりますように。

