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ハーバート・ローゼンフェルド『精神病状態 精神分析的アプローチ』をいただいた。

昨晩遅くにコーヒーを飲んでしまった。昨日はそんなにカフェインをとっていないような気がするが朝は紅茶にしておこう、とティーバッグをだした。カフェインであることに変わりないけど気分の問題。あっつい紅茶が美味しい朝になりました。今年も無事に夏が過ぎていく様子。私たちも無事に朝を迎えた様子。

昨晩、帰宅したらポストに厚みのある封筒が入っていた。あれ?なにか本の注文してたっけ、とポストから取り出す。早く見たかったが他の郵便物や重たい荷物のせいで確認できない。部屋に入るまですぐなのにこの短時間が待ちきれない。本が届くのは本当に嬉しい。荷物をドンと置いてチラシを紙袋に仕分けて厚みのある重たい封筒を手に取る。うわあ!と嬉しくなった。

ハーバート・ローゼンフェルド『精神病状態 精神分析的アプローチ』(松木邦裕、小波蔵かおる監訳、岩崎学術出版社)をご恵投いただいた。重たいけど意外とコンパクト?と思ったけど他の本と変わらなかった。なんでコンパクトと思ったのだろう。ギュッと詰まった論文集だから?

そういえば最近本屋さんで精神分析の本が置いてある棚の方へいっていなかった。自分で買うつもりでチェックしてあったが大変ありがたい。この本は8月に出たばかりの新刊だが古典だ。

1965年にイギリスで出版された。すでに訳出されている1987年出版の『治療の行き詰まりと解釈』(誠信書房)はローゼンフェルドの後期の思索を解説したものであるが、今回訳出された『精神病状態』は初期の論文を集めたものである。原書はpsychotic states a psycho-analytic approachで、精神病に対する精神分析の貢献の可能性を示した1947年の彼の最初の論文から1964年の論文が収められている。精神分析を専門的に勉強している人はここに収められた論文をすでに英語で読んでいる人が多いのではないだろうか。監訳者のおひとり、精神分析家の小波蔵かおるさんがその訓練中に「なぜこれが翻訳されていないのだろう」と不思議に思い翻訳を申し出たということを「解題」の最初に書かれているが、訓練に入っている人はおそらくみんなそう思っていたと思う。だからこの翻訳は大変ありがたく、これから精神分析を学ぶ人たちがこれまた学ぶことが必須であるメラニー・クラインに始まるクライン派精神分析の初期の成果を追うためにも助けになってくれるに違いない。英語で、しかも精神分析で、しかも理解が非常に困難な精神病の世界のことが書かれた論文たちは読みとおすだけで精一杯みたいなところがあると思う。私はそうだった。多分私だけではないと思うから助けてもらおう。

ローゼンフェルドは1909年7月生まれの精神分析家だ。ドイツで生まれたユダヤ人である、と書くだけで彼が経験した苦労を想像できるだろう。1935年、ナチスの迫害を逃れイギリスへ向かうがそこでも敵国の外国人であるために居場所を得られなかった。しかしなぜか精神療法家としてなら滞在できるということで彼はタビストック・クリニックでの訓練をはじめ、そこでメラニー・クラインの分析を受けた。彼の人生史や人となりは本書の解題にも『行き詰まりと解釈』にも触れられているが、今回の監訳者のもうひとりである精神分析家の松木邦裕先生が昨年2021年に出された『体系講義 対象関係論(下)ー現代クライン派・独立学派とビオンの飛翔ー』(岩崎学術出版社)にはパーソナルな描写もあり、これを読むと論文にも近づきやすくなると思う。どういう時代を生きたどういう人がこれを書いたのかということはどの論文を読む場合にもとても重要だろう。

また、ローゼンフェルドの最も重要な貢献の一つである精神病に苦しむ人への精神分析的アプローチについては『行き詰まりと解釈』の第一章「精神病治療への精神分析的アプローチ」が詳しい。

毎日勉強だなあ、と思いつつ、フロイト以外の精神分析の本をあまり読んでいなかった。古典を読むのは楽しい。目次をみてパラパラとするだけでここに収められた論文のいくつかはぼんやり思い出すことができた。勉強会でも話したいことが増えた。正確に紹介できるようにきちんと読もう。訳者にはフロイトをしっかり読んでいる知り合いの名前もある。頼もしい。翻訳作業でも世代を繋ぎながら精神分析を受け継いでいる監訳者の先生方からこの本をいただけたことがとても嬉しい。もうちょっとしっかりしなさい、というメッセージとして受け取ろう。どうもありがとうございました。

今日は金曜日。週末ですね。無理をしなくてはいけない人もほどほどのところでお茶を濁す練習も大事かも。自分のこころを守ることを優先するってなぜか本当に難しいけど長い目でみれば今そんなに無理しなくてもどうにかなることもあるかもしれない。少しずつ、力抜きつつ、ぐったりするだけではない夜を迎えられますように。お大事にお過ごしくださいね。