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精神分析

知識と配慮

フェデラー引退。Twitterで文字でも声でもお知らせしてくれてた。まだ41歳か。これだけ長い間トップ選手でいたのだからもう年齢とかで何を判断したらいいのかよくわからないけどずっと追ってきたわけでもない私でもしみじみするのだからすごい選手だった。

外がすっかり明るい。最近、いつの間にか眠ってしまうことが多く記憶がないのだがこの早朝の数時間さえ何していたんだっけとなっている。珈琲はいれた。洗濯もした。今のところ太陽が出ているので外に出した。フェデラーの動画に見入っていたというわけでもない。うむ。

昨日、本屋で一冊文庫本を買った。平積みされているのの下の方からとった。レジへ持って行くといつもなら尋ねられるカバーの有無を聞かれずささっとカバーをかけてゴムで止めて渡してくれた。確かにそれにふさわしい本かもしれない。

今井伸『射精道』(光文社新書)。こういう本が書名はともかくせめてシンプルな装丁の小さな本として出版されるのは良いことだと思う。もちろん(というほど知らないけれど)これは新渡戸稲造『武士道』にかけられた書名であるがジェンダー外来でも診療を行っているという著者は「射精道」は「女性のための思想」でもあり「オルガズム道」と言い換えることもできると書いている。

この本は大まかにいえば発達段階(思春期、青年期、妊活編、中高年期)、障害などに対する医学的メンテナンス、性教育の歴史を一男性としての著者の来し方と泌尿器科専門医としての知識と経験をもとにコンパクトに具体的に時にユーモラスに示した誰にでも読みやすい本である。

著者は「第2章 思春期編」で「第2条 セックスは「心・技・体」が伴うまでは行うべからず」といい、その基本が正しい知識に基づいたマスターベーションによる射精であるとしてかなり具体的な解説を行う。この部分は教育相談の現場などでかなり活用できるのではないか。性教育に限らず教育には何度も確認しなおせる媒介があったほうがいい。

セックスが異性間に限らず二人の行為であることは当然だが「第4章 妊活編」ではいまだ「不妊治療において最初のアクションをとるのは女性が多い」という現状が示される。そしてそれがどちらかの孤独な戦いにならないためにも月経周期や妊娠のメカニズムを知ることなどセックスを義務や苦行にしないための「妊活における「射精道」」15条が提示されている。「子どもを持たない選択をされている」人は読みばしていいと書かれているが、妊娠に関しては人間がその機能を通じて生まれてくる以上、経験の有無に関わらず知っておいた方がいいだろう。孤独な戦いを避けるためとしたらなおさら。

専門医による本なので医学的知見もわかりやすく紹介されいて助かる。男性不妊症の原因となる射精障害やED、トルコの報告によると最近増加している40歳未満のED患者のなんと85%が心因性(器質性ED約15%)とわかったそうだ。また、欧米ではデフォルトである「仮性包茎」が日本では恥ずかしいこととされていたり誤った情報は感情を刺激するから残りやすいのだろうかなど難しさを感じた。感情ではなく正しい知識を使用して対処すること、身体については徹底してそうであってほしい。

著者はよく親たちから「いつ性教育について教え始めればよいですか?」という相談を受けるという。そしていつも「子どもさんが自分から聞いてきた時が、教え時です」と伝えるそうだ。もちろんプライベートパーツの意識については、幼少期から入浴時などに親が教える必要があると書いている。著者自身は子どもたちが思春期の頃に中高生用の性教育の本を一冊ずつ渡したそうだ。なぜなら「本であれば、自分で気になった時に、気になる箇所を、誰にも気兼ねせずに確認できるからです」。

本書もそういう一冊である。書店員さんがささっとカバーをかけてくれたおかげで移動の電車の中でもそのまま読み進めることができた。配慮。性については特に、お互いに。

作成者: aminooffice

臨床心理士/精神分析家候補生