キッチンの小窓を開けた。風がない。大きな窓は開けない。カーテンもまだ開けない。腰が痛くて何もしたくない、と思いつつ無花果を朝から食べられるなんてなんて幸せ、と冷蔵庫を開けた。体調イマイチで登山をやめて駅周りの観光に切り替えたのに2万5千歩も歩いてしまったのが腰にまずかったか。蝉が結界を張っているような森が気になって向かってみたら遠くから見えた木の階段の前に小さな公園があった。たくさんの雀が木槿に潜りこんだり飛び出したりして賑やか。公園があるなら少し安心かな、と熊が出たら怖いな、という気持ちを落ち着けつつ歩くとすぐに人家に続くアスファルトへ出て森への行き方を見失った。そのうち出るかな、と鮮やかな花々やカーブミラーに映る見事な雲や美しい緑の田んぼを写真に撮りながら歩いていると前方にその森が現れた。と同時にそこには鹿がたくさん。私が驚いて立ちすくんだのがわかったのか、それなりの距離があるのに向こうもパッと顔をあげ一斉に背中を向けてあっという間に森に消えた。野生の鹿だ。奈良の鹿なら馴染みがあるし、山に行けば時々出会うことはある鹿だがあれだけの数の野生と出会うとは。一瞬の出来事だったがそこから自分もやや野生化したのか歩きに歩いていたら歩きすぎた。15時頃、駅に戻る途中に広告で気になっていたお茶のお店の前を通ったので寄ってみた。お昼を食べるにはおなかの調子が悪かったので(けど)途中の素敵な洋菓子屋さんで買った小さなクッキーを3枚しか食べていなかった。朝、駅の観光案内所でもらった地図を広げてみたがよくわからない。地元の人に「ぜひ行ってみて」と言われた場所に行きたかったが現在地がわからず距離が測れない。野生の感覚はいつのまにかゼロになっていた。しかたなくお店の人に「私が今いるのはどこでしょうか」と地図を見せながら聞いてみたら一緒に見てくれた。お店の人も最初は笑っていたが「えー、なんだこの地図。どこだ?」と言っていた。安心した。私は地図の読めない人ではないが、集中力がないのですぐに見るのをやめるか別の何かをみてしまう悪い癖がある。でも今回は地図が悪かった。なんとなく理解して美味しいお茶をいただいてまた歩き出すと朝みた景色にすぐ出会った。あれ?もうここまできていたのか、とようやく頭の中に地図が描けた。
それにしても腰が痛い。ぶらさがり健康器がほしい。実家にあったときは父親の、みたいな感じでほとんど使わなかったがぶらさがるだけの効果をわかっていなかった。自力で身体を伸ばすということがどれだけ難しいか。私の仕事は座りっぱなしで腰に悪い。痛み止めを打っても効き目がなかったぎっくり腰のひどい痛みを経験してから予防には励んできた。今回もこのくらいなら動けるのでまだいいがいつもと微妙に違う動きになるのでもっと悪くする危険は高まる。気をつけて動くことにしよう。座って作業するの辛いけど短時間ずつやるか・・・。良い1日にしていきましょう。